フルカワヒデオプラス『MUSIC: 無謀の季節』
ミュージシャンや音楽ファンからも一目置かれる作家、古川日出男が、『エクス・ポ』内で連載されていた異種格闘技連続対談「フルカワヒデオプラス」をバンド名に冠してフル・アルバムを完成!!発売は『エクス・ポ』を編集・発行するHEADZ内の言葉(Gram)と音(Phone)を主題としたレーベル、 GRAMoPHONEより。 ZAZEN BOYSの向井秀徳、虹釜太郎(360°records/5H)、鈴木康文(aen/Commune Disc)等との共演でも知られる古川の朗読パフォーマンス。小説家の朗読の枠に留まらない、ロック・ヴォーカリストをも超越した、神懸かりとも言える壮絶なパフォーマンスが、さまざまなジャンルで活躍する凄腕メンバーによって素晴らしい音楽アルバムとしてパッケージングされた。 メンバーは、d.v.d、Harpy、zuppa di pesce他のitoken、テニスコーツの植野隆司、そして『nu』の発行人で『エクス・ポ』のデザイナーであり、音楽家でもある戸塚泰雄の3人。 『MUSIC: 無謀の季節』は、三島由紀夫賞を受賞した2005年作『LOVE』のストレートな続編として執筆が続けられている『MUSIC』の音声・音響版であり、そのテキストは今後活字化される『MUSIC』に先行して発表されるが、CDに収録可能にした再編成・断章版、CDオリジナルのテキストとなっている。つまり現時点では未発表の作品であり、全編書き下ろしのテキストとなっている。 録音、ミックス、マスタリングは全て、ゆらゆら帝国、Boris他で有名な中村宗一郎が担当(スタジオも勿論、PEACE MUSIC)。 “表現の発生する現場”が見事に封印された、音楽でもあって文学でもあり、聴き終わった後に読後感のある奇跡の作品に是非触れて欲しい。 1. 第三次港区うさねこ戦争 2. is missing. 3. ひじょうに天才的な猫が太陽系に一〇〇匹いる 4. 無謀の季節 all text by 古川日出男 【古川日出男セルフライナー】 二都物語をはじめたかった。東京と京都の。ストーリー、声、音、音色の物語。それもCDで生まれるもの。もちろんCDで再現されるもの。 小説は、紙にだけ書かれるわけじゃない。ディスプレイにだけ映しだされもしない。ただ純粋に脳にタイプなり印字することも可能だ。もちろん、可能だ。耳を通して。僕は、文学の最後の……もしかしたら最初のフロンティアとしての、耳と声の小説を届けたい、と思った。 これは古川日出男のリーディングではない。驚異的な演奏力を持ったメンバーによる最上のBGMが付いたリーディング、ではない。そうじゃないんだ。ここにあるのは全部、演奏だ。ドラムもギターもリズムボックスも、あるいは/むしろ、声だ。どの音にも温度がある。 どの音色も、フロンティアにいる。二つの都市の「原始」を、ここに再現した。そう、したんだよ。 ー古川日出男(ふるかわひでお) 1966年福島県郡山市生まれ。作家。1998年に『13』(角川文庫)でデビュー。2002年に『アラビアの夜の種族』(角川文庫、全3巻)で日本推理作家協会賞と日本SF大賞をダブル受賞。2006年に『LOVE』(祥伝社)で三島由紀夫賞を受賞する。最新刊は『聖家族』(集英社)。 MUSICIANS; 古川日出男: voice itoken: drums 植野隆司: guitars 戸塚泰雄: rhythm machine recorded, mixed and mastered by 中村宗一郎 at PEACE MUSIC